木片に描かれた船

 兵庫県出石町の袴狭(はかざ)遺跡で1989年に出土した木製品の中から、船団とみられる 15隻を杉板に描いた古墳時代前期(四世紀)の線刻画が見つかり、同県教育委員会が30日発表した。
 丸木舟を基に波よけ板などを付加した「準構造船」とみられる。準構造船は土器などに描かれ、 大阪府八尾市の久宝寺遺跡で実物が一部出土しているが、船団らしい複数の船が描かれた木製品が 見つかったのは初めて。

 日本海に近い出石町には古代朝鮮の新羅の王子、天日槍(あめのひぼこ) の渡来伝説があり、ユネスコ・アジア文化センター文化遺産保護協力事務所の工楽善通・研修事業部長は 「外洋航海中の船団を描いたとみられ、朝鮮半島や中国との交流を知る上で貴重な発見だ」としている。
 杉板は長さ約197センチ、幅約16センチ、厚さ2センチで、今年四月、出土品の整理作業中に偶然発見。 地層や一緒に出土した土器などから古墳時代前期のものとみられる。
 彩色や仕上げの形跡はなく、用途などは不明だという。先頭の船から最後尾の船まで 約108センチにわたり、計15隻が右から左へ航行する様子を先のとがったものを使って線刻。 中心に描かれた母船とみられる一隻だけが長さ37センチと大きく、残りは8.2〜12.7センチだった。
 いずれも船首の波よけなどがリアルに表現され、工楽部長は「実際に船を見た人が描いた可能性が高い」と話している。

中日新聞 31.05.2000

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